ブランディング定点・定物観測

東京スカイツリーと東京ソラマチに見る身近というキーワード

前編の続き)

写真1 地上450メートルからアサヒビール本社を見た図
350メートルと450メートルのそれぞれの展望台を見させていただきました。

まずエレベーターがめちゃめちゃ速い!!
5Fから350メートルまで1分くらいだったでしょうか。
とにかくあっという間につきました。
しかもすごく静か。
動いているとはあんまり思えないし、耳も変になりませんでした。

上から見た感覚は350メートルで見た隅田川と下町の風情はかなりリアルで、高いところにのぼっているなと感じました。

それが乗り換えて450メートルのところからは、ちょっとリアリティに欠けてあんまりぴんとこなかったというのが正直なところでした。

写真2 最高到達地点 451.2メートル
ただスカイツリーのようなところから下を眺めて、大川を見ることができたのはとてもいい経験でした。

私は大川は、池波正太郎先生の小説(剣客商売)でかなり親しみをもっている地区です。主人公の秋山小兵衛が住んでいた鐘ヶ淵がすぐそばにあり、小兵衛の若い奥さんであるおはるが舟を漕いで出るのが大川。隅田川なのです。

その隅田川に小舟がでているのをアタマの中で想像しながら上から眺めていると、あっという間に時間がたってしまいました。

そして私が仕事上、もっとも興味のあったのが「東京ソラマチ」です。
フジテレビの「めざましどようび」5/19放映でも解説いたしましたが、今年できた商業施設の中では圧倒的な規模と内容でかなり楽しめるSCです。

SC面積は約52,000㎡。
312店舗のテナントをリーシングし、駐車場1,000台、駐輪場2,000台という構成です。 大きさから言うと駐車場は3,000台近くないととてもじゃないですが入りきりません。 立地上仕方ないことですが、今後周辺の駐車場ビジネスが盛んになることでしょう。

同SCの特徴をいくつか整理してみます。


(1)売上目標 300億

同SCは来年の3月末までに売上目標300億をめざしています。 約10ヶ月間で300億ですから1ヶ月平均30億ということになります。 単純に1年で360億のSCということです。1店舗1億以上の売上目標となります。

私が一通り見た印象で言えば、もっと売上はいくでしょう。 少なくとも年間で400億程度はいくのではないか。駐車場の問題はありますが、かなり繁盛するテナントが続出しそうな気がしました。


(2)SCコンセプト

「新・下町流」がコンセプトです。
新しい下町を世界に発信していく拠点したいというのが事業主体である東武鉄道の狙いです。 施設には、都内最大級の全312店舗が入りました。 一部フロアでは、江戸時代の商家で見られた建築を取り入れるなど、ハード面の工夫が見られます。 土産物や飲食店のほか、ファッションや雑貨、生鮮食料品の店もそろえています。

当初行くまでは、「観光客相手のいわゆる巨大な土産物ショップ」かと思っていましたがまったくちがいました。
本気で地元と観光客の両方を取り込もうとしているSC。
それが東京ソラマチでした。


(3)テナント構成

都内初出店は17店舗あります。 ソラマチ限定商品は47店舗で販売されます。
地元の墨田区にある企業の運営する店舗も15店舗あり、区内の魅力を発信する「産業観光プラザすみだまち処」も設けられていました。
ただ残念なのは産業観光プラザが上のフロアにあるので、もう少し店がたくさんある2Fや3Fにあれば街をもっと紹介できたのにと思いました。
これからは周辺の区の情報提供が非常に重要になってくるからです。

①下町商店街のイメージが感じられるストリート
写真3 1Fソラマチ商店街
約120メートルの通路に食品や雑貨の店が並ぶ「ソラマチ商店街」は、江戸切り子を使った行灯なとがあり、ちょっといなせなおしゃれな印象を持ちました。 どこか懐かしさを感じさせる内装がそこかしこにあるのが特徴です。

これはイーストヤード4Fでも同じような印象を持ちました。
個人的には4Fが一番おもしろい。
ここは言ってみれば、浅草・雷門の商店街のような雰囲気。
外国人が喜ぶようなお土産物もあれば、日本人の観光客が喜ぶ、かんざし、てぬぐいや、たいやきや、元祖食品サンプル屋など、とにかく歩いていて楽しい店が満載です。

小路のような導線も小粋で、そぞろ歩きしたくなるようなフロアでした。
私はここに2時間はいたでしょうか。
いろんな店が気持ちのいい接客をしてくれて、とても楽しませてくれました。 また行ってみたいフロアです。
これからはこのような「なんだか歩いているだけでワクワクするような小さな店の集合体」が求められていると実感しました。 時代は大から小へと確実に動いています。

②近隣客のデイリーユースを重視している
同SCは近隣住民など観光客ではない人たちもターゲットにしています。
高いものではなく、頻度よく買えるような商品も多数取り揃えています。
しゃれたレストランやカフェもたくさんありますが、 2Fの食品フロアにあるように、お惣菜が充実していてほぼデパ地下と同様の店ぞろえになっているのも特徴的でした。

同時に、澤光青果(八百屋)、ニュークイック(肉)、魚力(鮮魚)、北野エース(グロッサリー)など、生鮮三品もトップクラスのテナントを導入しています。
これは明らかに日常の買物を充実させるために選んだテナントです。 同時に、チーズガーデン(那須の有名チーズケーキ)、錦糸町の魚寅(タコ、マグロ)、岡埜栄泉本店(大福、ドラ焼き)など、いわゆる名店も入っています。

地元客のデイリーニーズに対応しながら、遠方よりいらしたお客様の満足度も向上させるというダブルターゲットの店舗であることを実感し、あらためていい店を作っているなと思ったのです。

③ファッションブランドも新業態や新しい店作りにチャレンジ
写真4 アースミュージックアンドエコロジーは
初音ミクとコラボ
ビームスが「レムソンズ」という雑貨+カフェの業態(SAにも出店している)にチャレンジしています。

フランフランが小型のインテリア雑貨店にチャレンジしています。

エスペランザは和を意識した内装で販売しています。

UAのビューティ&ユースはカフェがあり、ローリーズファーム、アース、アーバンリサーチはライフスタイルショップを本格的に作ろうと店作りを工夫していました。

また帽子、アクセサリー、靴、小物雑貨、化粧小物、ビーズなど、いわゆる雑貨小物のカテゴリーは店も多く、品揃えとしても非常に目立ち、大物から小物へとMDがシフトしていることが実感としてありました。 これもひとつの大きな流れであると言えます。

④接客などのサービスに時流を感じる
実際に商品を販売していた企業はまだ半分程度であったため、実際の接客状況はわかりませんが、とても好印象の店が多かったように思います。 かしこまった接客ではなく、身近さを感じさせる接客の店が多い。

これは私の勝手な印象ですが、いかに丁寧に接客するかよりも、いかにお客様に楽しんでいただくか。気持ちの良い接客、こぎみのいい接客を心掛けている店が多かったのは私にとってはプラスの印象でした。

というのは、ここは都心型のデイリーニーズにも対応するSCです。 しかも時々しか来ない観光客も対象にしています。 海外からのお客様も大事なお客様。 だけどブランドコンセプトは新・下町。

ということは、かしこまっていてはだめなのです。 下町風情を感じさせる接客がなければ、次回の来店にはつながらないでしょう。 ですから、親しみのある、近い感じの接客が大事になってくるのです。

これはこれからの小売業ではキーワードになります。 東京ソラマチだけでなく、他の施設でもこれを意識したほうがいいです。 それは、「かっこよさから身近さへ」という時流です。

優先度としては身近な感じをだせないと、かっこつけているだけではお客様の再来店は生まれないことを私は感じています。 その点でとても参考になる店が多いと思います。 職人的なたどたどしい接客の店もいくつかあるのが逆に気に入りました。

⑤ハード全体の印象はあたたかみと開放感のある店内
ハードの雰囲気は仲見世っぽい。 そしてまっすぐの導線を多く使っているのも特徴です。歩きやすいし分かりやすい。
また下町の雰囲気を感じさせるような行灯とか、導線沿いのちょっとした植樹。 また、施設内の休憩スペースでは、外光を取り入れ、グリーンを配置したり、ある場所はシャンデリアにするなど、フロアのコーナーイメージを重視したインテリアデザインになっていました。


派手な内装ではありませんが、歩いていてとても気持ちのいい素敵なSCでした。 抜群に有名なスーパーブランドはここには存在しません。 また、大きな百貨店のような店もありません(東武百貨店はありますが小さな店です)し、ゲームセンターなどもここにはありません。
あるのは、東京スカイツリーと、そしてたくさんの小さな店です。
この賑わい感こそがソラマチの売りです。
都会にできた日本一身近なショッピングセンター。
それがソラマチなのではないでしょうか。
身近さを楽しんで、そして新しいビジネスのヒントを掴んでいただきたいと思います。新しいブランディングのカタチをここに見ることができるでしょう。
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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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