ブランディング定点・定物観測

チャネルシフトでV字回復 BtoBネット販売のマツブン刺繍

マツブン刺繍  
刺繍という事業は、縫う前の設計に時間がかかります。したがって、コストはほぼ人件費に費やされてしまいます。

そこで近年は多くの刺繍会社が、下書きをせずにパソコンで設計し、データを作成した上で縫いに入るのですが、マツブンは細かい色を鮮明に出すために全て、「手書き」で通常の倍近い時間をかけて設計している点が特徴です。そんなデザインの細かい部分を表現できる設計の力と、自社で持つ大型の刺繍工場を強みとして、アパレルや服飾雑貨メーカーの下請けとして、刺繍加工の業務を受託して成長をして来ました。

しかし、市場の縮小に合わせて、数年前まで業績が下降していた時期がありました。


そんな時に、目をつけたのが、「インターネット受注のオリジナル刺繍入りポロシャツのセミオーダー事業」でした。普通、オリジナルのポロシャツを作るなら、プリントが多いのですが、「より高級感のある、刺繍やワッペンのものがいい」という人が増えているそうです。

そこで、2001年に商売の対象を広げることを意図してこの新事業をスタートしたのです。

元々、マツブン刺繍という会社は、個人向けネーム手刺繍の会社として創業しました。その後、2代目である先代の社長の時に大型の刺繍機械を導入して、アパレルメーカーからポロシャツのワンポイント刺繍などを受託していました。ブランドで言えばワニのマークの「ラコステ」、パラソルのマークの「アーノルドパーマー」、人気ブランドの「バーバリー」などの刺繍を受け、アパレル業界内ではある程度ネームバリューもある工場になっていました。

ところがバブル最終期の頃から、中国生産の台頭、ワンポイント刺繍ブームの衰退、カジュアル化やストリート系ファッションの伸張などによる取引先ブランド力の低下などにより、国内の刺繍生産額が急激に落ち込んできました。

1991年には国内に3,195社あった刺繍加工会社が2007年には約3分の2の1,929社に、総出荷額は約60%にまで減りました。マツブン刺繍の売上も2000年には全盛期の7分の1にまで落ち込んでいました。

そこで、少し視点を変えてみました。自社の注文状況から、ポロシャツの注文が多いことに目をつけたのです。

刺繍はポロシャツに入れる需要が大きいと気づいたのです。そこで、無地のボディ(デザインを入れる前のポロシャツ)を仕入れて刺繍加工をし、売るという形に変えました。そのために、最初はポロシャツ販売に絞ったWEBサイトからスタートしました。

現在もイベント用とユニフォーム用のポロシャツが柱ですので、ポロシャツのランディングページには力を入れていますし、ポロシャツ関連のリスティング広告では、全てポロシャツのページに飛ばしています。

その後、バスタオル用刺繍、ワッペンなど、幅広い用途での発注が入って取扱商品が拡大していきました。

今では似たようなことをしている会社も出てきていますが、当時は刺繍会社で、ポロシャツをインターネットで売っている会社はありませんでした。

現在は、会社の年商が約1億円超。うち、インターネットの売上は8000万円弱なので、構成比としては75%くらいになります。残りの25%は旧来からの刺繍の受託加工の仕事です。たまにWEBサイトからアパレルメーカーさんから問合せが来て「受託加工をやってほしい」という問合せも来ますが、数はほとんどありません。受託加工の仕事は紹介でしか増えていない状況です。今は、自身が入社した2000年からの加工の取引先の売上は全体の3%くらいしかありません。

新規のビジネスがなかったら、今のマツブン刺繍の状況は全く違ったといえるでしょう。

なお、マツブン刺繍の強みは、明瞭な価格設定です。試行錯誤して考えた挙句、デザインと枚数ごとに、全て価格設定をし、固定金額・価格表対応を実現しました。

また、インターネット上のビジネスは、何につけても比較ありきです。ネットで何かを買う人は、必ず他社と比較しているということを常に意識する必要があるのです。そこで、WEBサイト内に「他社との比較」ページを作っています。ここでは、印刷プリントとの料金の違いはもちろん、他の刺繍会社との違いも書いています

他にも、リスティング広告の使い方、仕入れと販売の体制の構築社内体制の整備などを行って、業績を伸ばして行きました。

この立ち上げの際のポイントとなるのは、それまでは「取引先メーカーの商品である洋服に刺繍を入れる」という請負業務のみだったのを、「インターネットで注文を受けて、無地のポロシャツを自社で仕入れ、都度クライアントオリジナルの刺繍を施し、納品する」という形に、仕販体制を変えたのです。販売チャネルをシフトする際に、単に売り先を変えるのではなく、「お客様が買いやすいよう、ビジネスモデル自体を変えた」のです。

WEB事業をはじめるということは、単に売り方だけを変えるということではありません。適切なビジネスモデルを作ることなのです。「マツブン刺繍」はこれに気づかされる事例企業です。

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