過去のブランディングコンサルティングレポート

ヌー大移動の蹄を感じ、極寒のブリザードで凍える!世界初出店「オービィ」とマークイズの魅力とは【後編】

前編の続き)

◆マークイズみなとみらいはライフスタイル体感型施設

オービィが入居するマークイズみなとみらいは、筆者がいま最も注目する商業施設です。6月20日にオープンしてから6月23日(日)までの3日間で、総来場者約40万人、売上高約6億9000万円の実績をあげました。このペースでいけば年間売上270億円程度まで売上を伸ばせる可能性があります(筆者推測値)。

マークイズみなとみらいは全189店舗(物販136店舗、飲食38店舗、サービス関係15店舗)。マークイズみなとみらいに先立って4月にオープンしたマークイズの1店舗目、マークイズ静岡は148店舗で180億円の売上目標です。

6月18日、19日の2日間の関係者や周辺住民などを対象にしたグランドオープン前の内覧会を含む数字ではありますが、マークイズ静岡の実績と比べても上々のオープン数字と言っていいでしょう。

同施設の一番の見どころは、これまでの商業施設のようにモノを売る店だけを集めたショッピングモールから、新しい体験や体感を提供するライフエンターテインメントモールへとコンセプトをシフトさせた点です。

同施設は立地特性を研究し、立地に合わせたコンセプトとターゲットを明確にした施設づくりになっているのが最大の特徴です。モノからコトへ移り行く消費者心理をしっかり掴もうとしている点に、従来の施設にはない工夫を凝らしていることが分かります。

(1)コンセプト
同館のMD(マーチャンダイジング:商品政策)コンセプトは、『エンジョイ!リゾートライフ、エンジョイ!スローライフ、エンジョイ!ビューティフルライフ、エンジョイ!ヨコハマタイム』としています。これを総括した言葉がライフエンターテインメントです。

ライフエンターテインメントモールとは文字通り、生活をより楽しく充実させるための施設という意味です。開発者の言葉を借りれば、「憩いの場であり、生活を美しく飾ったり、これまでよりもちょっといい生活だなと思えるような商品やサービスを提案する施設」ということになります。

それは同施設の外観や内装にもよく表れています。

マークイズみなとみらいの外観。店舗外観はスタッキングによりモノとコトの重なりを表現Photo by Tsuneyuki Iwasaki

建物は低層にし、隣接の横浜美術館やグランモール公園と一体になった立体都市公園。圧迫感を感じさせないように箱を積み重ねたようなスタッキングという工法で、外壁にはグリーンを多数配置した柔らかな施設外観を作り上げています。

また館内にいても室外やグリーンがよく見え、さらに屋上農園もあり、風や緑、光を感じさせるような施設にしており、できるだけ自然との共生を感じさせようとしています。

(2)ターゲット
ターゲットは以下の2つの層に設定しています。

1)子育て中のヤングアダルトファミリーとその親世代の3世代ファミリー
2)横浜・山の手ミセスと週末や観光シーズンに来街するカップル

近隣住民から観光客まで幅広い層をターゲットにしているのが特徴です。これは横浜・みなとみらいという立地特性上、欠かせないターゲティング戦略と言えます。

(3)店揃えはライフスタイル提案型ショップを中心に構成
同施設を視察して感じるのは、どこでもよく見かけるようなテナントが比較的少なく、同施設のコンセプトに見合ったような店を入店させていることです。

特に、海や山など横浜・湘南をイメージさせるようなスポーツ・アウトドアなどの店、質の高い生活を提案するインテリアや雑貨の店、値ごろでおしゃれなファッションを提案するアパレル関係の店、そして横浜や鎌倉、湘南を拠点にしている飲食店など、店舗構成に特徴があります。以下の2つの店舗が、その代表例でしょう。

ロンハーマンは新たなライフスタイルを提案しているPhoto by T.I.

1)「RHCロンハーマン」
目玉店舗の1つは、ロサンゼルスに本拠があるセレクトショップ「ロンハーマン」の新しいコンセプトストア、「RHCロンハーマン」です。同店のセンスでセレクトした洋服や雑貨、またサーフボードから自転車までを上手に組み合わせて店を作っています。同店で初めてカフェも併設し、本格的なライフスタイル提案ショップとなっています。

茅ヶ崎発のリゾートカジュアル、「スポーティフ」 Photo by T.I.

2)茅ヶ崎で人気の「スポーティフ」
同ブランドを立ち上げた岩倉瑞江氏は茅ヶ崎を代表する経営者の1人です。

1970年代に伝説のカフェ「ブレッド&バター」を出店させ、女性のための新しいウェアブランド「スポーティフ」を設立。サーファーガールのためのウェア、テニスウェア、フィットネスウェアを作り、スポーティフの原型となるリゾートカジュアルウェアに到達し、地元で人気のブランドとなっていきました。

オリジナルパターンの生地をデザインし、着心地を考えたモノづくりをしている姿勢に共感する女性が非常に多いようです。同店もマークイズの目玉の1つです。


◆滞留時間を延ばすための飲食・サービス・休憩スペースの充実

同施設にはフランスのモン・サン・ミッシェルにある老舗オムレツ店「ラ・メール・プラール」の日本1号店や六本木で人気の農家の直営レストラン「むかしみらいごはん六本木農園」など、他の商業施設には出店していない飲食施設が多数あります。

また、館内の休憩場所はすべてテーブルや椅子、壁紙を変えるなど、来店客の休憩場所をよりリラックスできるような工夫を施しています。

子連れのファミリーが多数来店することを想定して、授乳室とおむつ替えコーナーを広くとり、ファミリーがストレスを抱えないようなサービスにも力を入れています。

屋上には果樹園・菜園があり、20品種以上の柑橘類、50種類以上の野菜などを育て、来店客が種まきから収穫までを体験できる場所も用意しています。
朝から行列のオムレツ
キッズ向け休憩所
広々としたキッズルーム
隣のビルが見える屋上果樹園・菜園

◆都心型店舗と郊外型店舗をミックスしたような施設を作り上げた

しかし、マークイズみなとみらいが、ここまで独自性を追求した背景には、一体何があるのでしょうか。

以前のみなとみらい地区はどちらかと言えば観光客を意識した観光施設や商品が目立っていました。1993年にオープンしたランドマークタワー内のランドマークプラザに入っている店は、そのようなニーズに対応することを意識していたように思います。

しかし、みなとみらいには2011年にはカップヌードルミュージアムがオープンし、年間100万人以上を集客する企業ミュージアムができました(参照;「ブランディングナビ」コンサルティングレポート)。2012年には世界最大級の室内ジオラマがある原鉄道模型博物館が開館し、オープン2ヵ月で10万人を集めるなど、こちらもファミリーに人気の施設になっています。観光客だけでなく地元客が来ても楽しめるような街へと変化を遂げ始めたこともあり、2012年にはみなとみらいを訪れた人が、前年を約800万人上回る約6700万人まで伸びました。

また近隣の横浜駅周辺には日産自動車のグローバル本社に代表されるような多数の企業が進出し、現在は約1520社、約8万9000人が働くビジネスの街としても変貌を遂げ始めています。

みなとみらい21地区は観光客が集まるだけの街から、ここで働き、暮らす街へと変化しつつあるのです。したがって、もっと日常使いができる店やサービスが必要になってきたのです。その結果、マークイズには、毎日訪れても買うものがあるような、上質な生活消費財を中心におくことを基本軸にしたのです。

店舗構成や配置を細かく見ていくと、それを意識している事がわかります。そこで、都会的なライフスタイル提案型ショップを1階に集積させ、地下には食品スーパー「京急ストアグロッサリーマーケット」や和洋菓子店などが入っています。2、3階は玩具専門店「トイザらス・ベビーザらス」「ボーネルンド」や家電量販店「ノジマ」、キッズファッション専門店、手芸専門店などが入居。

みなとみらい駅と直結する地下4階には100円ショップやコンビニ、地下2階には大型スポーツ専門店やドラッグストアを設けるなどデイリー商材も多く品揃えしています。

都心型ファッションビルと郊外型ショッピングセンターが融合したような、近隣顧客が毎日でも使えるような施設を意識したのです。それがマークイズみなとみらいの特徴と言えるのです。


◆立地を創造していく三菱地所の新たな挑戦

これまで日本での商業施設開発といえば三菱商事ではなく三井不動産でした。三井不動産はららぽーとを中心に大型SCを約30年運営してきています。

三菱地所は東京・丸の内の丸ビルや仲通りをはじめとした、大手町、丸の内、有楽町といった東京駅を中心とした都心エリアをオフィスビル開発と共に進めてきました。しかし今後はもう少し幅広く立地を創造し、商業施設開発を進める意味をマークイズに込めています。

今後は三菱の作る大型SCのブランドを「MARK IS(マークイズ)」で統一して展開していきます。三井といえばららぽーとのように、三菱といえばマークイズとなるような1つのシンボルとなるでしょう。

みなとみらい線、東急東横線、東京メトロ副都心線が相互直通運転の開始で、マークイズみなとみらいに直結する「みなとみらい駅」の3月16日~4月14日の乗降客数は、前年比8.5%も増加しているとのことです。このアクセスの良さも、今後の継続的な集客を可能にしていくでしょう。

みなとみらいの立地創造は三菱地所の商業施設開発の本格スタートの意味もあるのです。マークイズみなとみらいの開業によって、みなとみらい地区の回遊性が高まり、横浜の新たな玄関口としてさらに注目が集まるか。今後の変化に注目したいと思います。

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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