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「G.Gモール」は量販店を活性化させる救世主か!? シニア市場取り込みに本腰入れたイオンの変化(後編)

前編の続き)


◆フロア全部G.G向け全国初の店舗構成

では、G.Gモールはどのような売り場なのでしょうか。

G.Gモールは4Fワンフロアを指しています。葛西店の1F~3Fも全面リニューアルしてシニア世代向け売場になったのですが、もっとも特徴的なのがG.Gモールです。

コンセプトは「大人が“わたし”を楽しむ場所」。G.G世代向けの店を結集させています。1フロア全体がG.G世代向けモールとなるのは国内で初めてということで、5月末のオープン当初から大変な注目を集めています。

カフェ、カルチャー、フィットネスを中心に、G.G世代が充実した余暇をゆったりと過ごせる店舗や売場を揃えています。モールの中心には、イオンが初めて展開するカフェ「CAFE KO-U-AN」(カフェ コウアン)があります。

カフェではタブレット端末の無料貸し出しサービスを実施し、タブレット端末を通じ、事前にインストールしてあるアプリケーションの閲覧に加えて、店内のイベント情報やお買い得商品情報などG.Gモールをより満喫するための各種情報を発信するという新しい試みを実施しています。タブレットの貸し出しは好評であれば今後、全国に拡大していく予定ということです。

また、G.G世代は子どもが独立したあとにペットを飼う人が多いのも特徴です。ペットはシニア世代の新たなパートナー、家族として非常に注目を集めています。

そこで、G.Gモールにはペット専門店「イオンペット」があります。ペット用品やペットホテル、トリミングといった商品・サービスの展開だけでなく、G.G世代がペットやペット仲間と一緒に最新のデリカやスイーツを楽しめるイートインスペースを設置し話題を呼んでいます。

デリ&スイーツコーナーのあるペットショップ イオンペット
まるでスイーツやデリショップのような売場で、これまでのペットショップのイメージを完全に覆すような店を作り上げ、シニア世代のこだわりペット需要に対応する売場を作り上げています。

ペットはこれからの高齢化社会を支える重要な存在になっていく可能性があります。その意味でも同店の新業態は注目に値します。

また、2つのスタジオと6つの教室を備えた「イオンカルチャークラブ」では、手芸や美術といった一般講座やヨガ、ダンスなどの講座、料理教室、囲碁・健康麻雀サロンなど約150を超える幅広い講座を用意しています。シニア世代にとってはカルチャー教室のような勉強の場はシニア世代の友達づくりの交流の場としても利用されています。その意味ではイオンカルチャークラブは全国にどんどん広がっていくことでしょう。

講習スペースはG.G世代の憩いの場となりそう
手芸素材を販売する「パンドラハウス」では、店内に設置された講習スペースでレザークラフトなどの教室を随時開催し、作品展示も行う予定です。

イオンカルチャークラブやパンドラハウスでは、調理器具を購入したお客さんにクッキング教室で指導したり、手芸講座に参加した人に新素材を提案したりするなどして、顧客に新しい体験や経験をしてもらうための提案を積極的にしていくようです。



◆カーペットにゆったりソファG.Gを意識した売り場の工夫

4FのG.Gモール以外にも同店ではシニア向けにさまざまな工夫を凝らしています。その代表的なものをまとめてみます。

1.各フロアにカーペットを敷き、上質感を演出

2.通路にはゆったりしたソファを設置。居心地のいい空間をつくっている

各フロアの床にはカーペットが敷かれ落ち着いた雰囲気の店内
3.部門別の特徴
(1)食品売場
 ・全体的に什器が低い
 ・価格表示やPOPが大きい
 ・冷凍食品などのレディミール、お惣菜、お弁当などレンジで
  チンする商品が多い
 ・少量パックの肉などを用意
 ・お惣菜、お弁当、レンジでチン商品が多い
 ・和菓子も充実 など

(2)住関連
 ・いぐさ、扇風機、つえ、お年寄りを意識した調剤薬局など
 ・ベビー・子ども服などはシニア向けのギフト購入を促すような
  売場づくり
 ・ベッドまわり、睡眠、リラックス、健康器具関係、売場内セミナーなどを開催
 ・補聴器、老眼鏡などの品揃え強化など

(3)衣料品
 ・シニアアダルト・ミセス向け商品を強化
 ・スーツの横で下着、肌着を販売し、買いやすさを強調
 ・シニア向け帽子一番化コーナー
 ・バッグなどもシニアミセス向けに特化など

以上のようにイオン葛西店ではG.G世代に向けて徹底的にハードとソフトを研究し、従来型のGMSから脱却しようと試みています。



◆世界的変化を捉えた地味だが最先端の店

イオンリテールの梅本和典社長は「モノと同時にコトをいかに提供していくかが重要と捉えている。今後GMSをお客様のニーズに合った形に対応させていく必要がある。そのひとつの答えの形が葛西店である」と話しています。

イオン葛西店を全フロア歩いてみるとよく分かることがあります。従来はどちらかと言えば売場の片隅にひっそりと陳列されていたような脇役の商品がここでは主役です。つえやシニアの帽子、老眼鏡などがフロアの好立地で、大きく目立つように展開されています。まさにシニア向け売場であることが実感できるポイントです。

イオン葛西店の正面入口には自転車の駐輪場がある
来店顧客も大半が50~70代で、自転車、徒歩の周辺シニア客が多いのが特徴です。まさに地域の高齢化に完全に対応した店舗であり、流通業にとっての1つのモデルケースとなることでしょう。

イオングループの戦略はM&Aやグローバル化の推進、郊外型の大規模モール開発などに目が奪われがちです。これらに比べるとシニアシフトは地味な取り組みですが、イオン葛西店でのG.Gモールの取り組みこそが、同社の最先端の戦略であると筆者は考えています。高齢化社会は日本だけの話ではなく、今後は世界的な社会構造の変化になるからです。

イオンのこのような取り組みこそが高齢化市場を切り開く重要な一歩となることでしょう。

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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