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「G.Gモール」は量販店を活性化させる救世主か!? シニア市場取り込みに本腰入れたイオンの変化(前編)

シニアをどのように攻略していくかは小売業各社にとっては必須の戦略と言えます。しかし、実際には介護関連マーケットのみが注目されているのが実情であり、元気なシニア・シルバーに向けた企業の具体的な取り組み事例はいまだ少ないように感じます。
そんななか、大胆な戦略をもってシニアに切り込み始めたのがイオングループです。同社はシニアシフトを戦略の切り口として設定し、策を次々と打ち始めています。その象徴的な取り組みがイオン葛西店のリニューアルです。イオン葛西店が新たに設置した「G.Gモール」とは何か。イオンの掲げるシニアシフト戦略を通して日本の高齢化市場で成功するためのキーワードを探ります。

◆イオンが掲げる4つのシフト戦略

イオングループは中期経営計画(2011年度~2013年度)において3つのシフト戦略を掲げています。

1.都市型シフト(大都市圏中心に出店やリニューアルを強化)
2.アジアシフト(アジア、ASEANに向けてのグローバル戦略強化)
3.シニアシフト(55歳以上のシニア向け戦略強化)

最近ではこれらに加えて、デジタルシフト(ネットを含めたIT戦略強化)も加えた4つのシフトを掲げています。

上記の中でも特に国内市場において強化している戦略がシニアシフトです。顧客ターゲットとしてシニア層をより重視していく取り組みです。

イオンでは従来から主なターゲットとしていたのは、子どもがいるファミリー層でした。これは同社だけでなく他のGMS(総合量販店)も同様です。今でもファミリーは主要顧客層ではありますが、日本の人口変化は予想以上に速く推移しています。


◆人口動態の変化に対応その戦略が「シニアシフト」

下記は日本の将来推計人口をグラフ化したものです。2012年1月に発表された同データによると、日本の総人口は、今後、長期の人口減少過程に入り、2026年に人口1億2,000万人を下回り、2048年にはついに1億人を割り9,913万人となります。そして、2060年には8,674万人になると推計されています。

(資料:2010年は総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の
出生中位・死亡中位仮定による推計結果をもとに筆者作成)


全体の人口は減少する一方で、高齢者人口は増加の一途を辿ります。高齢化率はこれから50年間にわたって上がり続け、2020年には3.3人に1人が、2060年には人口全体の39.9%、およそ2.5人に1人が65歳以上になると予測されています。

(資料:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」による
65歳以上人口推計結果をもとに筆者作成)



◆従来の延長線上に飛躍的な発展はない

イオンのような小売業はこれまでファミリーをターゲットに大型店を全国に展開してきました。いわゆるニューファミリー層を対象に、30~40代向けのパパやママ、またその子ども達に向けてアパレルブランドや食品、飲食、サービスなどを展開してきたのです。

しかし、前述したような変化が進むなかでは、そうした商品や店舗政策では十分な売上を上げることが難しくなってきたのです。

特に、出店してから数十年が経過している店の商圏内人口は、高齢化率が急速に高まって、年齢構成が明らかに変化しているところも多数あります。人口構成は変わるのに店は大きく変わらないというのでは店舗の売上を伸ばすのは難しいと誰もが分かります。

ただ、店舗側はこうした状況が分かっていながらも、大胆に戦略を切り替えられず、あくまでもファミリー狙いで店舗開発を進めてきました。しかし2010年を過ぎた頃から、従来型の延長線上には飛躍的な発展はないことを、各社は実感しました。

イオングループではこうした日本全体のトレンドに加えて、2010~13年に65歳前後で退職を迎える人が多くなるだろうという予想もあって、より強力なシニア展開が必要になると判断してきました。

その旗印になっているのが、イオン葛西店の「G.G戦略」です。


◆開店後30年で商圏も変化かつての客層は皆シニアへ

「G.G」とは「グランド・ジェネレーション」のことです。「威厳がある」「最高位の」といった意味を含め、放送作家の小山薫堂氏が発案した言葉です。イオンはこの言葉をシニアシフト推進のキャッチフレーズとしました。

G.G世代は他の世代よりも若々しく年齢を重ね、人生をさまざまなスタイルで楽しんでいる年長者が多い世代として捉え、敬意をもって表しています。同社では10年後を見据え、一般的な高齢者の定義である65歳以上よりも広い、55歳以上をシニアと捉え、シニアシフト戦略を推進しています。

イオン葛西店(東京都江戸川区)は2013年5月30日に全面改装を実施し、リニューアルオープンしました。同店がこの地にオープンしたのは1982年と今から30年以上前です。筆者が初めて同店を訪れたのは1991年。当時はジャスコ葛西店としてオープン後9年目だった同店は、週末だけでなく平日もたくさんのお客さんを集めていたのを覚えています。当時のイオンの代表的な都市型店舗のひとつでした。

しかし時代は変わりました。

江戸川区の人口は1990年に56万5000人だったものが、2010年には67万8000人と増加しています。イオン葛西店のある東京メトロ東西線西葛西駅周辺は大手町まで15分程度という近さから、20~30代の独身世帯や30~40代のニューファミリー層がこぞって住居を構えました。しかし、あれから30年経って、当時独身やファミリーだった若い世代がシニア世代へと突入しています。

レジで精算する顧客にはG.G世代が数多く見られる
その結果、今では葛西店商圏の55歳以上のシニア比率は30%近くあり、高齢化率のスピードが全国と比べても速い地域となっていたのです。同時に葛西商圏は1km2あたり約1万7000人近くが住んでおり、人口密度は江戸川区平均の1.3倍もある地域です。世帯年収は700万円超が44%と圧倒的に所得水準が高い商圏なのです。

このような理由からイオン葛西店をG.G世代の第1号店舗と位置づけて、G.Gモール1号店をオープンさせました。


 (後編に続く)

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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