過去のブランディングコンサルティングレポート

酒々井プレミアム・アウトレットから考えるアウトレット飽和論の真贋と生き残り策(後編)

前編の続き)


◆市場の変化を読み解く5つのポイント

今やアウトレットモールは全国にどんどんできていて差別化が難しくなってきています。
現在の日本のアウトレットモール市場規模は以下のようになっています。

2013以降15年ごろまでは、まだアウトレットモールは新規出店と増床拡大していく施設があることから、その市場規模は拡大していくことでしょう。

アウトレットモール先進国の米国ではアウトレット施設は260ヵ所程度あり(筆者調べ)、まだ日本の市場は米国の四分の一程度です。仮に日本のアウトレット市場がアメリカのように発展するとしたら、単純に人口比較から言えば、日本でも80ヵ所程度まで拡大してもおかしくありません。

ただし、日本とアメリカの小売り市場は大きく違います。日本には郊外型のショッピングモールや都市部には食品スーパーや百貨店、ファッションビルなど様々な業態が存在しています。そもそも、アメリカのように広大な敷地を確保することは困難です。

そう考えるとこの狭い日本では、アメリカのようにアウトレットモールがたくさんオープンするということは考えにくいでしょう。日本で40ヵ所ものアウトレットモールが存在することは、すでに過剰な状況かもしれません。

筆者はすべての施設が今後も生き残っていけるとは思えません。これからは勝ち負けの差がかなりはっきりしてくることでしょう。筆者は今後のアウトレット市場の動向を、以下のように分析しています。

(1)売上高が減少するアウトレットモールが増えていく
(2)アウトレットモールの立地が大都市圏に接近してくる
(3)入居ブランドは外資系ラグジュアリーブランドが減って国内ブランド主体になっていく
(4)アウトレット専用企画商品が急増する
(5)雑貨、食品・飲食、サービスなど、リピート率を高めるような工夫が必要

2006年には30施設で4000億円程度だったアウトレットは、2011年には40施設で6000億円以上に拡大してきています。アウトレットモールは同じ業態でシェア争いをする時代から、都心の百貨店や郊外のショッピングセンターといった既存の小売流通とのシェア争いという面が強くなってきています。したがって、既存流通と比較しても魅力のある店揃えでなければ、集客は見込めず、売上高が減少するモールが増えてくるでしょう。

あまりにも施設面積が小さかったり、テナント数が少なかったりする施設は立地のいい大型のアウトレットモールに負け、既存流通にも勝つことができない厳しい状況になることを意味しています。一定以上の面積、テナント数を持ちつつ、比較的都心に近い立地を確保することが成功の要因になるのです。
上記の表は関東周辺のアウトレットモールの一覧表です。注目してほしいのは、同じ商圏に2社以上のモールが競合しあう状況があることです。例えば三井アウトレットパーク木更津と酒々井プレミアム・アウトレット、那須ガーデンアウトレットと佐野プレミアム・アウトレットなどです。

これらは超近隣ではないのですが、アウトレットモールは商圏が広い業態のため対象商圏が重なり合ってきます。結果的にそれぞれのアウトレットモールの商圏範囲が狭くなり、競合が激しい状態になり始めているのです。商圏の重なりを避け、新たに魅力的な立地を探していけば、自ずとこれまでの郊外から大都市圏へ接近することになります。

こうした状況は、片方が増床すればまた片方が増床というように規模の勝負になってきています。増床できる施設はいいですが、できない施設も数多くあります。

周辺に競合が無かったとしても安心はできません。買い物客はより魅力的なアウトレットモールに足を運びますので、前述したようにテナント数が少ない、施設面積が小さい、アミューズメントサービスがないなど施設としての機能が弱い施設は自然淘汰されていくことになるでしょう。


◆顧客満足度の高いモールになるためのポイント

アウトレットモールに出店するテナントも、買い物客から支持されるために留意すべきことがあります。

それは、アウトレット専用企画商品を乱発しないということです。

アウトレットモールは今後も増えていくことが予想されています。テナントも出店するチャンスが増えるでしょう。しかし、アウトレットモールは、日常の買い物の場所として利用されるようになるため、特別安いものを時々買うという買い方から、普段づかいの商品を普通に買いに行く店として位置づける人たちが増えることになります。

したがって、在庫処分品だけでは買い物客を満足させることができません。アウトレット専用商品ばかりの店は、魅力が低下していくことになります。

もっとも、アウトレットは発祥が「ファクトリーアウトレット」でB品(キズ物、汚れ品など)、あるいは過剰に作られた商品を処分するのがもったいないため、特別に割引して販売するという業態です。いわゆる「ワケあり商品」であることを納得して購入する店です。

しかし、なんでもかんでも安く売っていくことがアウトレットだと売り手側が思っていると、買い物客には相手にされなくなってしまうでしょう。

対策としては、アウトレットモールにはできるだけ出店を抑え、本当に買い物客への感謝の気持ちをこめてご奉仕するという商品をそろえるべきです。アウトレットモールを運営する側にとっても、それが結果的に差別化にもなり、寿命を延ばすことにもつながります。

コンビニが日本式の運営と品揃えで一気に伸びていったように、アウトレットモールも今、日本式に変化しつつあります。完全に日本の市場に合わせた新しい業態として生まれ変わった時に、アウトレットモールは日本市場で確固たる地位を築くことになるでしょう。

酒々井はその試金石でもあるのです。これからの動向にますます注目したいと思います。

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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