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酒々井プレミアム・アウトレットから考えるアウトレット飽和論の真贋と生き残り策(前編)

アウトレットモールがあらためて注目を集めています。日本にアウトレットモールが本格的に登場したのは1993年。それから約20年で日本には40を超えるアウトレットモールが開発されました。デフレにうまく乗る形で、アウトレットモールは流通業のひとつの形として日本人に認知される存在となりました。同時に企業側も新しい販売チャネルの1つとして捉えるようになり、アウトレットだけで年間100億以上を売り上げるアパレル企業も出てきました。
このようななかで、4月19日にオープンしたのが酒々井(しすい)プレミアム・アウトレット(千葉県酒々井町)。一部では飽和化したと言われるアウトレット市場において独自の施設づくりで注目されています。これからのアウトレットモールはどうあるべきなのか。酒々井から見えてくる今後のアウトレットモールのあり方を探ります。

◆初年度売上高目標は軽くクリアしそうな勢い

酒々井プレミアム・アウトレットは日本でアウトレットモールを積極展開している三菱地所・サイモン(東京・千代田区)が運営しているアウトレットモールです。同社としては9番目、関東近県で展開するプレミアム・アウトレット業態としては御殿場(静岡県)、佐野(栃木県)、あみ(茨城県)に次ぐ4番目のモールです。

酒々井はオープンした当初、入居しているテナントは121店舗でしたが、今後モール自体を拡大・増床して200店舗超の大型アウトレットモールになっていく予定です。初年度売上高目標を180億に設定していますが、オープン後の集客状況を見ると、目標は軽々とクリアしそうな勢いを感じます。筆者がそう感じた最大の理由は、その施設づくりの独自性にありました。


◆成田空港から車で約12分 立地と客層を意識した施設づくり

酒々井プレミアム・アウトレットの最大の特徴は、何といってもその立地です。一緒に取材に訪れたテレビクルーが時間を計ったのですが、成田空港から車で約12分、バスで20分ほどの距離です。酒々井は成田空港から一番近いアウトレットなのです。

オープンモール形式の施設
その立地の優位性は、他のアウトレットではなかなか崩せないでしょう。実際にオープン直後からたくさんの外国人観光客が同店を訪れている光景を目にしました。

また酒々井は都心からも比較的近いアウトレットモールです。

都心から車で50分ほどの距離は、佐野や御殿場が約1時間半程度かかるのと比べてもアクセスしやすいアウトレットだと言えます。人口の多い千葉や茨城、そして東京からの買い物客を集客しやすいこの立地を確保できたことは、同店の成功要因になりうるポイントです。

このような立地を最大限活かすために、アウトレットモールではじめて外貨両替所を入居させ、銀聯カード決済が全店でできるようになっているなど、海外からの観光客対応を強化しています。外貨両替所では米ドル、ユーロはもちろん中国元、韓国ウォン、タイバーツなど7種類の通貨が両替可能となっています。また、800席あるフードコートでは成田空港のフライト情報が見られる工夫もしています。

海外からの観光客にはうれしい外貨両替所
また、入居するテナントも「レベッカミンコフ」や「マーモット」など、日本初進出の外資系ブランドを入れつつも、地元の食材を使ったピザ屋や成田ゆめ牧場を誘致するなど、地域性を活かした店づくりにしています。

結果として、酒々井ではアパレルテナント構成が5割以下で、リピート率が高いキッチン雑貨や服飾雑貨、ライフスタイルショップなどの構成を高める施設づくりになっています。たち吉(陶器)や昭和西川(寝具)などのテナントがその代表格です。

海外からの観光客にとっては外資系ブランドだけでは満足しないかもしれません。地元のテナントが入店することで、酒々井らしさが出て、他のアウトレットモールとの差別化ができます。同時に、地元の買い物客にも馴染みの店や雑貨店が出店していることは、来店動機となるでしょう。

このように、酒々井では立地特性を十分に考えた上でテナント構成に活かし、年間350万人の来場客数を想定した施設づくりやサービス体制を整えています。

ではなぜこうした特徴づけをしなければならなかったのでしょうか。そこには立地特性を活かすということ以上に、業界特性、アウトレットの市場動向が大きなポイントとしてありました。


◆「ちょっと買い物に」という普段使いのニーズを取り込めるか

その背景を、三井アウトレットパーク札幌北広島店を例に考えてみたいと思います。

北海道にはもう1つ、千歳アウトレットモール・レラというアウトレットモールがあります。店舗数は400店舗以上で、アメリカの不動産投資会社が運営するアウトレットモールです。こちらは典型的なオープンモール形式のモール(店が外にでているタイプのモールで酒々井と同じ形態)です。

一方の三井アウトレットパーク札幌北広島は、クローズドモールです。すべての店舗がひとつの建物の中に入っていて、アウトレットというよりショッピングセンターのような店づくりです。店舗数も130店舗程度と酒々井と同レベルで、アウトレットモールとしてはさほど大きくはないのですが、平日も集客している繁盛店です。

三井アウトレットパーク札幌北広島に行って、繁盛の理由がよくわかりました。「外資系ブランドの衣料品を安く買いたい」という買い物客だけでなく、地元の顧客が満足できるテナント構成になっているのです。

同アウトレットは、高速道路の北広島インターチェンジを出て1分程度のところにあります。電車やバスで行くとすこし面倒なのですが、車であれば非常に便利です。これなら、周辺住民も普段から「ちょっと買い物に」と、気軽に訪れることができます。

地元買い物客を満足させるために、建物1F入り口には北海道の野菜やお菓子、鮮魚関係を扱うスーパーなどの地域食材店が入居していて、多くの買い物客で賑わっていました。

「モール周辺の住民が日常的に利用できるアウトレットモール」。これこそが日本式の新しいアウトレットモールのあり方ではないかと同施設を訪れて感じました。

2014年春に三井アウトレットパーク札幌北広島は約3万平方メートルに増床すると発表しました。テナント数は約45店増えて約175店にする予定。2012年度の売上高は約160億円と11年度を数億円上回っており、好調なうちに拡大を決めたようです。

 (後編に続く)

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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