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「マクロに分析してミクロに対応」が成長の源泉 業績好調のセブン-イレブンに学ぶ変化対応の蓄積(後編)

前編の続き)


◆人口は減少しているが世帯数は増加している

セブンは「“近くて便利”というコンビニの存在意義を再定義したこと」(同社広報)を、近年の飛躍の要因だといいます。

近くて便利は時代によって変化します。さらに、利用するお客さまが便利と思う内容は時代によって変わります。大型の小売店が増え、売り場面積は増加の一途をたどっていますが、一方で身近な小売店が減っています。

同時に人口減少時代を迎えていますが、その内訳を見ると世帯数は増加し、一世帯あたり人員は減少しています。

2019年までは日本の世帯数は5300万世帯まで増加するといわれています。特に単独世帯数、夫婦のみ世帯数、ひとり親と子世帯数の増加が予測されています。同時に平均世帯人員は2010年の2.42人から2.30人へと減っていきます。

これは「1人分の食材や用途ニーズが増える」ということと、「間に合わせ的な商品やサービス需要が増える」ということです。

1人暮らしや夫婦共働き世帯が増えることで、より一層のCVSの存在意義がでてくるとセブンでは考え、この数年間、その変化に地道に対応してきました。

商品構成の見直しを行い、たとえば、調味料や洗剤などもアイテム数を増やしたり、100円冷凍食品を強化してきたのです。また、価格も実勢価格に合わせ、「CVSは何でもあって便利だが、高い」というイメージを払拭することによって大きく売場の内容を変化させていきました。見た目は分かりにくいですが、実は棚割りは大きく変化しているのです。


◆モノからコトへの変化を代行業への進化によって具現化する

セブンはこれに加えて、モノからコトへの変化をより具体的に、「付加サービス」という形で展開し始めたことで、店を進化させました。

実はこの数年のコンビニの売上構成比の変化にもそれは表れています。

2008年に非食品とサービス部門の構成比が34.4%だったのが2012年には38.7%にまで拡大しています。特にサービス部門は4.2%から4.6%へと徐々に拡大し始めています。

世の中のマクロ環境を冷静に分析し、その中で何を強化していくのかを考えた結果、付加サービスの強化に入っているのです。

「なんとなく便利そうだから」、「なんとなく差別化できそうだから」という理由でサービス強化をしているわけではないことに注目すべきです。

コンビニという仕組みは、数値的な裏づけのもとに動いているロジカルな業態だといえるでしょう。

ではどのようなコトを提案すると人は喜ぶのでしょうか。

ポイントは、「いかにお客さまの手間を省けるか」、いわゆる「代行サービス」です。

お客さまが「これって面倒だな」、「手間がかかるな」と感じるところを代わりにやって差し上げること――。それこそが小売業の提案すべき、「コト提案」です。

この代行をどこまで真剣に、継続してやりきれるか。ここにこれからのコンビニの成長因子があると筆者は考えています。

コンビニの提案するモノからコトの提案は、「代行サービスの進化」にあるのです。

セブンが始めたお届けサービスは、500円以上の買い物でお届け料無料にするサービスで、高齢者にとっては「買い物代行、運送代行、運転代行」になっています。しかし、店側にとってみれば、ただでさえ忙しいのに、わざわざお客さまに商品をお届けするのは大きな手間であり、負担でもあります。

ところが、現在、1万店舗(全体の約70%)でサービスが行なわれています。なぜなら、お届けサービスが良い評判を生み、クチコミを生む源泉になり始めているからなのです。

また、2013年1月からスタートしたセブンの100円ドリップ式コーヒーマシーンの設置。コーヒーはファンになると同じ場所で買い続ける習慣性が強い商品です。したがって100円で美味しいコーヒーが飲めるとなったら、さらなる固定客化が可能になります。そこでセブンでは1万5000店すべての店舗に2013年の夏までに導入することを決定しています(4月末時点で7500店舗に導入を完了)。

実はセブンの店舗では2004年から2000店の店頭でコーヒー販売を行なってきました。

しかし、「あまり売れなかった。それはエスプレッソで、飲んでいると最後にカスが残る。お客さまの多くはドリップ式のコーヒーを望んでいるということが分かった」(同社広報)。

その結果、1店舗あたり平均85杯売れる商品として、新たな集客商品へと成長し始めています。わざわざお客さまはカフェに行かなくても、コンビニで美味しいドリップ式のコーヒーを買うことができるという点でいえば、これもカフェや喫茶店の代行ということができます。

行政サービスの付加も行なっています。自治体との提携ができれば行なうようにしていて、福岡市では住基カードを持っていれば東京でも住民票が取れるというサービスまでセブンの店頭でできるようになっています。これは市役所の代行ですから、行政サービスの代行までできるようになってきたともいえます。

またPB商品もお客さまの声を代行して商品開発しているわけですから、実はコンビニという業態は究極の代行サービス業であるということができるのです。


◆コンビニの変化は顧客の変化に忠実なだけである

今、明らかに消費トレンドは変わり始めています。従来型の消費トレンドの価値観が崩れ、新しい価値観へと変化しています。小売業はこの消費者の変化に応じて、店と売場を変化させていかなければいけません。

今、成長している小売業は異業種や異業態へと着実にシフトしています。洋服屋は洋服を売るお店であると思っていたら知らない間に取り残されます。今や洋服屋は、靴屋であり、家具屋であり、雑貨屋であり、飲食店でもあります。それだけさまざまな商品やサービスを取り扱うように変化してきています。

同じようにコンビニはすでに昔のコンビニではなく、今やスーパーであり、カフェであり、チケット取り次ぎ店であり、本屋であり、宅配サービスでもあるのです。

これを企業の視点で見ると、競合の顔ぶれが大きく変化してきているということを意味します。

食品スーパーの競合はどこでしょうか。食品スーパーの競合は食品スーパーではありません。コンビニであり、ディスカウントストア、ドラッグストア、100円ショップ、道の駅、自動販売機です。さらにネットも完全なる競合です。食品はありとあらゆるチャネルで販売されている時代なのです。

コンビニが取り組んでいることを表面的に見ると、他の業種から商品やサービスを奪って、お客さまを来店させて、売上を作っているように見えます。しかし本質は違います。

ただシンプルに、「お客さまの嗜好にあわせて、お客さまのライフスタイルの変化に対応して業態のあり方を見直し続けた結果、他の業種・業態の取り扱っている商品やサービスを付加することになった」というだけのことなのです。

コンビニは小売業の中で、もっともお客さまのニーズの変化に忠実な業態だといえるのではないでしょうか。

ここまで見てきたように、コンビニは小さな変化対応を繰り返し、その結果、今期の最高益に結びつきました。

私たちもコンビニを見習って、もっと大胆に、お客さまの価値観シフトに対応しなければいけないのではないでしょうか。

2013年以降のコンビニの小さな変化を見逃さないようにしましょう。そこに商売のヒントが隠されているのです。

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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