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「マクロに分析してミクロに対応」が成長の源泉 業績好調のセブン-イレブンに学ぶ変化対応の蓄積(前編)

2013年2月期のコンビニエンスストア大手の決算を見て、筆者はあらためてその強さに驚くと共に、コンビニという業態がここにきて大きな進化を遂げていることを実感しました。コンビニについてはさまざまなメディアがその実態や全貌を明らかにしています。
筆者はコンビニが追求している日本市場での進化から、多くの企業にとって学ぶべき新しい商売のヒントがあると思っています。飽くなきお客様思考による業態進化を、ここまで徹底的にやっている業態を他に私は知りません。日本市場では3万店舗が限界だといわれてからもさらに店舗数は増え続け、今や5万店舗を超え、さらに2013年も3000店舗以上が日本に誕生する予定です。
コンビニはどこまで成長していくのか。私たちは何を学ぶべきなのか。業界トップであるセブン-イレブン・ジャパン(以下セブンと略)の動向を追いかけて、その行方を解明します。

◆CVSの最高益を生み出す源泉

業績を牽引するセブンプレミアム。棚の一番良いところに陣取っている Photo:DOL
コンビニ大手各社の2012年2月期決算を簡単に振り返ってみましょう。

セブンとローソン、ファミリーマートの上位3社は、営業利益が過去最高を更新。セブンの営業利益は前期比2.0%増の1867億円、ローソンは同7.2%増の662億円、ファミリーマートは同1.2%増の431億円でした。

総菜やファストフードなどのオリジナル商品(おにぎりや弁当など、コンビニならでは商品の総称)、なかでもPB(プライベート・ブランド)商品の売れ行きが好調で、売上、利益を押し上げる要因になりました。

アベノミクスにより消費が上向き傾向にあるとはいえ、高額商品以外の消費はまだ回復しておらず、食品や日常品にその波及効果が出ているとはいえないのが実態です。

それにもかかわらずコンビニだけは伸びています。3つのKFS(Key Factor for Success:成功要因)を分析してみたいと思います。

■KFS1:3100店舗の新規出店を計画
日本のコンビニは次のように生成発展してきました。

(※図表は2012年12月時点の売上と店舗数。グラフは4万6905店舗となっているが2013年5月時点の店舗数はすでに5万店舗を超えている)
一時期は3万店舗が日本のコンビニの飽和点といわれていましたが、すでに5万店舗を超えて、さらに店舗数は増加の一途をたどっています。さらに2013年は主要企業だけでも3000店舗を超える出店計画を立てています。

これにより、1店舗あたりの商圏人口は2500人程度となります。20年前、コンビニは人口5000人に1店舗といわれていたので、当時の2倍程度の店舗数になっていることがわかります。当然、1店舗あたりの商圏もどんどん狭くなり、セブンが設定している1店舗あたり500メートル商圏が現実化してきているのです。良い立地さえあればスピーディーに店舗を出店できる開発ノウハウと効率的な店舗フォーマットが成長の後押しをしています。

■KFS2:来店顧客層の変化に対応した店づくりと商品開発
コンビニの客層が男性から女性へ、また若年層からシニア層や団塊世代層に変化していることを読者のみなさまはご存知でしょうか。

例えばセブンの来店客の構成は若年層から高年齢層へと変化しています。

1999年では20歳代以下の割合が半数を超えていましたが、2011年には3割にまで減っているというデータがあります(-20%)。

一方で50歳以上の高年齢層は倍増して3割に達し(+14%)、40歳代とあわせると半数近くにまで増えているのです。

同様の傾向は業界二番手のローソンでも見られ、生鮮食品を強化した店舗では女性やシニア比率が高まり、客単価も上がっているようです。ファミリーマートでも2012年2月期の客数に占める女性の比率は45%まで高まっているというデータがあります。

コンビニ業界では少子高齢化の波や若年層のコンビニ離れに比較的早い段階で対応し、事業転換を試みた結果が好業績となって表れているといえるのです。

■KFS3:女性客の増加がコンビニの商品開発を変えた
女性客比率が半数程度に増えてきたことから、コンビニの商品開発は格段に向上したといえます。

特にセブンは「セブンプレミアム」という、品質にこだわったPB商品開発に力を入れ、今やセブンプレミアムの75%はCVSで販売されています。

2012年度の売上は1700アイテムで4900億円(グループ計)。単純計算で1アイテム当たり売上2億8千8百万円にもなります。ただ、セブンはこれで満足することはなく、これを2013年度に6500億円、2014年度8200億円、2015年度1兆円に伸ばす計画を立てています(売上高には高級PB商品「セブンゴールド」も含む)。2015年にはコンビニオリジナル商品全体で3兆円の売上を目指していますから、実にその三分の一をPBであるセブンプレミアムで構成しようという目論見です。

セブンのPB商品の高い売上を支えているのが女性向け商品です。年間売上高10億円以上を売り上げるキラーアイテムが92skuも存在しています。(sku:Stock Keeping Unitの略。 最小在庫管理単位のこと。 基本的には同じ商品であっても、サイズ、色、形状などが異なる場合には別々のSKUとして扱われる)



今や国内のPB市場は主要企業の商品だけでも2兆円程度あります。メーカー側としてもすでに無視できない規模まで成長しました。したがって、メーカー側は「PB市場は小売業が企画・販売する低価格品の市場」という位置づけで捉えることはなくなりつつあります。むしろメーカーにとっては、強固な販売網が整ったコンビニにおいて、特別なヒット商品を生み出せば、多くの利益が見込める有望な市場として重要視し始め、いかに良い商品を開発できるかを競うような時代へと変化しています。

この背景にあるのは、来店客層の女性比率が上がってきたことによるものであることは明らかです。女性客に支持される商品を作った企業が、結果的に売上を上げ、シェア競争に勝ち残るということです。

特にセブンでは徹底して品質にこだわり、製品の改廃を頻度よく行っているのが商品開発の最大の特徴です。

「例えば、ウーロン茶は以前はジャスティスという会社がセブンプレミアムウーロン茶をつくっていたのですが、現在はサントリーフーズが作っています。90日目で必ずどの商品も見直し、数字が落ちていればその原因を探り、さらに良い商品をお客さまに提案できるように取り組んでいきます。もし品質やお客さまの求める水準での製造が難しければ、他のメーカーさん企画・製造の取り組みをお願いする可能性もあります」(セブン&アイ-ホールディングス広報担当)

このような品質へのこだわりがさらに女性客の支持を得て、売り上げ増に結びついているのです。

 (後編に続く)

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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