過去のブランディングコンサルティングレポート

日本郵便初の商業施設「KITTE」は成功するか?(後編)

前編の続き)


◆「知る人ぞ知る」店を集めた本格的アンテナショップで集客を狙う

では、その店舗構成にはどんな特徴があるのでしょうか。

1.内装環境に和のこだわり
「KITTE」の1階エントランス Photo:DOL
KITTEの内装環境は、建築家の隈研吾氏が担当しています。

木材や瓦、織物、和紙など、日本で昔から使われている素材を内装の仕上げ材として使用し、各地を「つなぐ」ことをコンセプトにしています。

6階 「地方の名店」を集めたレストランフロア。福岡県久留米市のナラ材を用いた「柔らかい木の空間」。1500m2の屋上庭園も備えています。
5階 「わが町自慢の食」をテーマにした飲食店フロア。クリ材を用いた「繊細な線でできた木の空間」。
4階 「日本の文化発信」をテーマにした物販店フロア。金属塗装を用いた空間。
3階 「日本の美意識」をテーマにしたファッション雑貨中心のフロア。織物を用いた空間。
2階 「デイリーファッション」フロア。愛知県西三河地方の三州瓦を用いた空間。
1階 「新しい日本」をテーマにしたフロア。天井から八角形の柱上にボールチェーンを吊り、昼は自然光で夜は照明の光で異なる表情を見せる。北海道旭川のサクラ材も使用している空間。
地下1階 鉄道会館がプロデュースする「全国各地の特産品、スイーツ、惣菜」などを集めた食品物販フロア。和紙の空間。

最近の開発では、日本の良さを見直す動きが強くなってきています。これは日本回帰の1つの表れと見てもいいでしょう。また売場環境に投資をするというのもこれからのトレンドです。先日リモデルオープンした伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店とまではいかずとも、来街者をワクワクさせるような環境整備は、重要な施設開発の要素となり始めました。

2.文化と情報の発信拠点
施設内では、東京を訪れる観光客のためのワンストップインフォメーションセンター「東京シティアイ」、東京大学との産学連携プロジェクトのミュージアム「インターメディアテク」、国際会議などが可能な「ホール&カンファレンス」がオープンします。また、保存部分4階には旧中央郵便局の郵便局長室を復元したコーナーなどもあります。モノだけでなくサービス拠点も充実させています。

3.伝統・地元・ご当地銘品がキーワード
注目の地下1階にはKITTE GRANCHE(キッテ グランシェ)が入ります。東京駅丸の内地下広場からそのままアクセスできる地下1階は同施設のベストポジションと言うことができます。

このフロアを手掛けたのは、東京駅のエキナカで「グランスタ」、「グランスタ ダイニング」などを運営するJR東日本グループの株式会社鉄道会館です。同社が初めて「エキソト」で手掛ける食のフロアが「KITTE GRANCHE」なのです。

全国ご当地銘品フロアをテーマに、これまで東京の主要な施設には出店してこなかったようなテナントを全国各地から集めているのが特徴です。いくつか特徴的な店舗をご紹介しましょう。いずれも東京初出店です。

【1】 本家あべや(秋田)
日本三大地鶏である「比内地鶏」の生産責任者で、農場の直営店舗というのが特徴です。比内地鶏とその卵を使用した親子丼や、焼き鳥など鶏料理の店。秋田名物のきりたんぽ鍋や「親子丼」、「大館名物鶏めし」などテイクアウトが充実している点も注目です。

【2】 御影髙杉(みかげたかすぎ)(兵庫)
神戸に本店を構える人気の洋菓子店が常設ショップとして東京に初登場。神戸や大阪でしか店舗展開していない店です。代表商品である「ミルフィーユ オ フリュイ」はイートインのみで楽しめる逸品。

【3】 PATISSERIE YANAGIMURA(鹿児島)
鹿児島で人気の洋菓子店、パティスリーヤナギムラ。鹿児島の特産素材である『サツマイモ』をテーマに、5種類の『さつまいも』を使用したクリーミースイートポテトや、さつまいもチップスにチョコレートコーティングした『薩摩チョコチップス』が人気。

また、物販店舗でもいくつかの注目店舗があります。

旅と移動をテーマにして無印良品から商品をセレクトして、国内外の国際空港に11店舗展開している「MUJI to GO」(3階)。「MUJI to GO KITTE丸の内では物販だけでなく、「WHERE to GO」という企画を予定しています。毎月各国、各分野から人選し、その人の持ち物を軸にして「その人の、その旅」を店内に設置したテーブル上で表現するというものです。モノからコトの提案を感じる店舗となるでしょう。

「Lowpro Design」によるファッションレーベル、「WORK NOT WORK URBAN RESEARCH」(1階)はロンドン発のファッションブランドのフラッグシップショップ。 ロンドンのクリエイティブ集団「TOMATO」の創立メンバーのサイモン・テイラーがクリエイティブディレクターを務め、ロンドンスタイリスト界の重鎮であるアダム・ハウが共同デザイナーとして参画しているブランドです。

また2階には婦人服ブランドが入っていますが、そのラインナップはどれもが大人の女性のためのナチュラル感溢れるブランド構成であり、デイリーファッションを提案するゾーンにふさわしいフロアです。

3階、4階は雑貨などを中心に、こだわり・単品専門店が多いのもKITTEの特徴です。

(1)200種類のハンカチを販売する東京・三宿のハンカチ専門店「H TOKYO」(3階)
(2)スパイラルマーケットのオリジナル雑貨専門店「+S」(1階)
(3)ジュエリーと雑貨の新業態「PHARMACY e.m.」(1階)
(4)静岡の沼津にショールームを持つ注目のインテリアショップ「Floyd」(3階)
(5)ニューヨークにも店舗がある福井県鯖江市の「金子眼鏡店」(3階)
(6)1716年創業の老舗で今、注目されている奈良の雑貨関係専門店「中川政七商店」(3階)
(7)京都河原町の人気雑貨店「ANGERS bureau」(4階)
(8)糸や道具、編み物教室などの専門店「MOORIT」(4階;二子玉川の店を丸の内に移転)
(9)富士山麓の自然派化粧品専門店「北齢草水」(4階)
(10)東京・御徒町の木製デザイン家具の店「Hacoa DIRECT STORE」(4階)

このような店をよく見つけたなというくらい、それぞれの地域では非常に人気があるが全国的にはまだ知られていない「知る人ぞ知る店」をテナントとして集めています。

スカイツリーの東京ソラマチの4階も下町に焦点を当てたおもしろいフロア構成でした。KITTEはフロア面積もそれほど大きくないですから、独自性をださなければ継続した来店は見込めません。

KITTEがある東京駅丸の内南口は有楽町、そして銀座ともつながる立地。このような立地では、よく見かける店を集めてもまったく勝負にならないし、魅力的な商業施設とはなり得ないのです。

ですから、1つひとつの店に特徴を持たせた店舗構成としています。KITTEは都心にできた地域物産店舗を集めた本格的なアンテナショップとも言えるのです。


◆「通過する駅」から「集う駅」へあらゆるものを“つなぐ”存在に

東京駅は2014年に開業100年を迎えます。現在、この100年をひとつの節目とした「東京駅が街になる」と題した東京ステーションシティプロジェクトが進行しています。八重洲口のツインタワー(グラントウキョウノースタワー、サウスタワー)、日本橋口の高層ビル(サピアタワー)、エキナカ(グランスタ)、東京駅丸の内駅舎など、東京駅と周辺の複数施設を1つの街として開発していくというJR東日本が主体となって進めている巨大プロジェクトです。

このプロジェクトのコンセプトが「通過する駅から集う駅へ」です。

東京駅は1日100万人が利用する巨大駅です。しかし、これまで東京駅は“通過駅”だったため、ここで止まって買い物をする、ちょっと観光気分で立ち寄るようなエリアではありませんでした。しかしこの数年の東京駅周辺の再開発により、東京駅がひとつの買い物商圏、街としての機能を持ち始めました。

東京駅は今、わざわざ目的を持って来街する街、人が集まる街へと変わり始めています。

今回誕生するKITTEは丸の内と八重洲、東京駅と有楽町駅、そして銀座を結ぶ中継地点です。その中継地点としての役割を果たした時に、人と人とを結び、地方と東京を結び、さまざまなものをつないでいく施設として認知されることでしょう。

あらゆるものがつながる時代にKITTEの果たす役割はとても大きいかもしれません。「つながり」がこれからの時代を読み取るキーワードなのです。

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■ 著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
船井総合研究所 ブランド&PRチーム 上席コンサルタント
「組織は戦略に従う。戦略は思い(情熱)に従う」というコンサルティング信条のもと、出会うすべてのお客様に対して、情熱を込めたコンサルティングを行う。コンサルティングテーマは、「永続性を実現させるブランド戦略」。アパレル業界を専門領域として、アパレルメーカーの戦略立案、新業態開発を得意とし、SPA専門店、百貨店、GMS、品揃え型専門店にいたるまで川上から川下までのコンサルティングを実施している。現在はアパレル企業のブランド戦略づくりに特に力を入れている。立教大学兼任講師。
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